ぽすとすくりぷと
古泉が好き過ぎてどうしようもない。只今二期放映中につきネタバレ注意。
年下古泉×キョンキョン。
キョンが大学生、古泉はキョンより十近く年下。
この設定がOKな方のみ続きへどうぞです。
「先生、ねー、せんせい?」
妙に間延びした甘えた声が、朝の目覚まし時計のように鬱陶しく響き渡る。
「せんせー、せーんせぇ!聞こえてますよね?せ、ん、せ、い」
「ひいっ!」
耳の中に生暖かい空気を感じ、思わず悲鳴を上げてしまった。畜生、ここまで無視を決め込んでいたのに台無しじゃないか。耳元を押さえて奴を睨むが、涙目のせいで効果が無いのか腹が立つ事に一笑されてしまった。
「先生ってココ、本当に弱いですよね」
指で自分の耳を軽く叩いて、年齢に不釣合いな笑みを浮かべる。この口調だけは丁寧だが、クソ生意気で十近く歳が上の俺にいつも小馬鹿にした態度を取る少年の名は、古泉一樹。町一番の豪邸に、祖父と家政婦の三人で住んでいる。俺はコイツの家庭教師を頼まれた、ごくごく普通…と言いたい所だが、それよりはちょっと偏差値が低めの大学に通う学生だ。
そんな平凡な一市民の俺と御曹司であるコイツの繋がりは、亡くなってしまったコイツの両親と俺の両親が親友という間柄で互いの家に行き来していたので、小さい頃に何度か遊んだ事があったらしい。“らしい”というのは、俺はさっぱり覚えていないからだ。
人見知りの激しかったコイツが、当時俺だけには良く懐いていたらしく、両親が亡くなったと同時に日本に引き戻され、祖父の元に引き取られたコイツの面倒を見るのは俺が適任だろうと指名され、遊び相手兼家庭教師を任されたのが三ヶ月前。
あの時断っておけば良かったんだ。勉強が忙しいだのなんだのと理由をつけて。もしタイムスリップが出来るならば、目が飛び出るほど高額の家庭教師代にいとも簡単に釣られてしまった当時の俺を全力で殴って止めてやりたいね。そして、お前のせいで今の俺がどんだけ苦労しているかと説教してやりたい。
「先生。約束のご褒美、下さい」
うっすらと頬を染めてお小遣いを貰う前の子供みたいな(実際子供だけどな、まだ)キラキラとした目で見上げてくる古泉を、俺は椅子に座ったままぞんざいに手で振り払った。
「イヤだね」
あぁ、口にするのも想像するのだって嫌だ。実行するなんて死んでも御免だね。そう容赦なく言い切ると、古泉は酷く傷付いたように顔を顰めて泣き出してしまった。相変わらず大袈裟であからさまな演技にうんざりする。
小学生相手に酷過ぎると思うか?けどな、相手は小学生である前に『古泉一樹』なのだ。これで少しでも『可哀相』なんて仏心を出したら、忽ちこっちが被害者になるんだぜ。
「ぐすっ、先生は、やっぱり朝比奈さんみたいな人が良いんですよね…」
古泉が赤い目を擦りながら嗚咽交じりにそう言った。朝比奈さんというのは、ここで家政婦をしている女性だ。こいつと違って外見だけでなく、中身まで天使のように愛らしい人だ。たまに手作りのお菓子等をくれるので、もしかして俺に気があるんじゃないかとも思ったりもしたが、渡して下さる時に必ず「余っちゃったから、捨てちゃうのも勿体無いと思って~」と良い笑顔で仰るので、非常に悲しいがその望みは大変薄いと思われる。
しかし、例え愛が伝わらなくてもこの生意気なガキ相手に思いを寄せるよりかは何百倍も健全だ。俺はショタコンでも同性愛者でも無い。断じて、ない。
「そうですよね。先生は朝比奈さんみたいな“巨乳”な人が良いんですよね。ベットの下にあったDVD、みーんな巨乳のお姉さんのヤツばっかりだったし」
てめえ!勝手に人の聖域見てんじゃねえよ!!畜生!やっぱり、コイツを自分の部屋に招き入れてしまったのは失態だったっ。
あの時も何度も何度も部屋に来たいと言ってくるから「今度の作文コンクールで入賞したら、入れてやる」って約束したんだ。そしたら入賞どころか最優秀賞を取ってきやがった。末恐ろしい餓鬼だぜ、全く。
「約束…したのに。嘘つき」
ぽつり、と古泉が言った。反射的に肩が跳ね上がる。
「大人って、みんな嘘つきですよね。先生も、やっぱりそうなんだ」
「あ…」
悲しげに俯く古泉の声を聞いて、思い出した。そうだ、こいつは亡くなった両親の嘘がトラウマになっているんだ。
外国で悲惨な交通事故に遭い、コイツは軽症で済んだが両親は致命傷を負った。そして事切れる寸前、父親はコイツに言ったらしい。私達は絶対に死なないと。だから泣くのは止めなさいと。しかしその約束は守られなかった。両親の『優しい嘘』はコイツから一ヶ月もの間、言葉を奪った。
三ヶ月前、初めて(厳密に言えば再会だが)会った時のこいつの表情が、今も忘れられない。この世の終わりを見てきたような精気の無い顔。子供がこんな表情が出来るのかと、正直ぞっとした。しかし日が経つに連れてコイツの顔にも笑顔が戻り、その一ヶ月後には再び話せるまでに回復した。
コイツの祖父は俺のお陰だと言うのだが、俺にはさっぱり分からん。特別何をしてやった訳でもない。けれど両親の話を聞いて、どんな些細な約束でもコイツとした約束は必ず守ってやろうと、そう決めて実行してきただけだ。
「すまん。悪かった。約束を破ったら駄目だよな。それにお前、頑張ったもんな」
自分の非を認めて謝罪し、落ち込んだ様子の古泉を撫でてやろうと手を伸ばす。
「はい!僕、とっても頑張りました」
語尾に星でも付いてそうな弾んだ声と名子役真っ青な非の打ち所の無いウインクに、眩暈がして頭を押さえた。
完璧踊らされてるな、俺。まぁ、そんな事より“約束”ってヤツをとっとと実行してしまおう。
「ふふ、嬉しいなぁ」
嬉々として机の上によじ登ろうとする古泉に行儀が悪いと注意するが、全く聞く耳を持たない。それから完璧に机の上に上がると散らかった教科書やノートを端に退かして、膝立ちの格好で俺の正面まで歩いて来た。俺がゆっくりと椅子から立ち上がると、首に細い腕が廻される。
「今から先生は、僕に“大人のキス”を教えてくれるんですよね?」
『先生』と『僕』と『大人のキス』にアクセントを置き、古泉が目を細めて厭らしく笑う…って、本当にコイツは小学生か!?実は俺より年上で、変な女の力のせいで幼児化したとかそういう設定じゃねえんだよなっ?
「先生、ほっぺが赤くなってます…かわいい」
あのな、古泉。可愛いっていうのは主に女の子や小動物に使う言葉なんだぞ。国語の時間で習わなかったのかなんてどうでも良い事を考える。
あー、もう!手っ取り早く終わらすか。いつもみたいなソフトキスでちょっと長い間くっ付けてりゃ満足するだろ。“大人のキス”に定義が有る訳でもあるまい。
そう腹を括って溜息を吐き、自分から古泉に唇を寄せた。……いち、に、さん。よし、これで充分だろ。
「…っ、はい!おしまい!!」
急いで唇を離し、古泉から距離を取って視線を逸らす。全く、何でこんな事言い出すかねこのガキは。コイツの容姿なら寄ってくる女の子はごまんといるだろうに。
「先生」
名前を呼ばれて正面に向き直ると、満足したのか古泉は満面の笑みを浮かべていた。よかった。やっぱり何だかんだ言いつつ、コイツもまだ子供だった訳だ。
「飴、食べません?先生が約束守ってくれたから、そのお礼です。はい、あーん」
どこから取り出したのか古泉が『牧場の朝』と表記してある小さな袋を破り、中から出てきた白い飴玉を俺の前に突き出した。
少し恥ずかしいが折角くれると言っているのだ。それに、この飴は俺の好物である。躊躇いながらも口を開けると、飴が放り込まれた。
「じゃあ、僕もいただきます」
放り込まれると同時に古泉の声が耳に届いた刹那、思い掛けない出来事に俺の思考は一時停止した。
「……っ、ん、ん゛ーーーーーーーーーっっ!!!」
現状を理解して悲鳴を上げようとしたが、くぐもった音にしかならなかった。口の中を甘い飴玉が転がる。
しかし、転がしているのは自分ではない。自分の物とは違う『もう一つの舌』が、まるでそれを楽しむかのように口の中で暴れまわる。口を離そうとする度に舌を何度も甘噛みされてタイミングが掴む事が出来ない。
瞬きの音すら聞こえてきそうな位置に目尻を薄紅色に染めた古泉の瞳があり、潤んだそれが半分ほど目蓋で隠れている。うわっ…なんてエロい顔してんだ、コイツ…。
俺は大人顔負けの色気を漂わせる古泉と飴から零れる甘い匂いに、情けないが完璧に酔ってしまっていた。
「ふ、…んぁっ、く……っ、ぷはっ、ぁっ」
重ねて酸欠状態になってしまい、耐え切れなくなった俺はとうとう膝を曲げて背後の椅子へと倒れ込んだ。
上半身を弓反りにして額を押さながら息を整えていると、古泉の笑い声が聞こえてきた。
「ごちそうさまでした」
「な、何がっ…ごちそうさまだ!」
上体を起こし、平然とした顔で机の上で行儀良く正座して手を合わしているクソガキをきつく睨み付けた。
すると、そんな俺を見た古泉が虚を突かれたように目を見開き妖しく笑う。それから突然こちらへと腕を伸ばしてきた古泉に、異常なほど身体が反応してビクついた。
うわ…小学生のガキ相手に本気で畏縮してるなんて、どれだけ情けない男なんだ自分は。
そんな事を考えながら力いっぱい目を瞑っていると「ピロリン」というヤケに軽い電子音が耳に届いた。薄っすらと目を開けると、携帯電話の液晶を頬を染めながらウットリした表情で見ている古泉がいた。
「何を撮ったんだ」という声を、目の前に突き出された携帯と古泉のとても良い笑顔に遮られる。そして液晶に写った画像を脳が認識した瞬間、俺は文字通り絶句した。言語化するのもおぞましいが…そこにはきつく目を瞑り顔を真っ赤にした俺が、弱々しく握りこんだ右手を口元に当てその口の端から白い液体を垂らしていた…
って、何だこのあらぬ誤解を受けそうな画像は!携帯を取り上げようと手を伸ばしたが、素早い手つきでそれをかわされる。
「貸しなさい!っつーか、その画像を今直ぐ消せ!!」
「イヤです。だって先生、ちゃんと“大人のキス”してくれなかったじゃないですか」
うっ…やっぱり分かっていやがったか。全く、本当にませたガキだな。
「これでおあいこです、ね」
膝上に身体を移動してきた古泉が見上げて笑う。俺は溜息を吐きながら、さてどうやってあの画像をこの世から完全に消去してやろうかと考えていた。
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嫌々言いながら古泉の言いなりなキョンでした。(笑)既にラブラブ。
小学生なのに古泉が本気で変態です本当にry
でも一番困ったのは、段落でした。自作の小説の段落分けが分からないって
どんな作者だよ…。
そして歳の差パロの古泉は比較的攻め度が高く書ける事に気付きました。(笑)
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プロフィール
ノーミュージック以下略。
ゲームも大好き。
ギャルでもエロでも百合でも
BLでもどんとこい。
京一と古泉症候群(常に)末期。
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